実父はクズの天才
振り返る機会があって、思いがけず振り返らなくていいところまで思い出してしまった。
それがちょっとだけ面白いので書いておこうと思う。
面白いと思えるのは、今の私が、完全に、それを他人事として振り返ることが出来たからだ。
中学生の時に両親の離別により、父の行く先など知らぬまま私は社会人になった。
社会人といっても、内定を取り消された18歳は、求人情報誌を見て見つけた中小企業の面接を受け採用され、3か月間OLをした。この時の手取りは11万円だった。無理だった。その頃会社には隠してホステスのアルバイトを掛け持ちした。
次の仕事が決まるまでの繋ぎだと思っていたのに、思わぬ高給にしばらく続けることに。
思わぬ高給の具体的な数字は、40万円だった。
その頃、高校生時代から友人Tとルームシェア生活をしていた。
Tはキレイ好きで料理好きだったので、頼んでもいないのに色々としてくれた。
まるでお母さんみたいだよ!(その後しばらくTの事をお母さんと呼ぶようになる)
そんな生活をしていたある日、知らない女の人から手紙が届いた。
2人でルームシェアを始める時に、家族以外には誰にも教えていない住所に手紙が届いたのだ。私宛だった。
中を開けると、紙が3枚入っていた。
1枚目には手紙。2枚目には何かをコピーしたようなもの。
3枚目には、、なんかもう覚えてないけど、個人情報的な物。
まず女の人の正体が誰なのかわからないので、手紙を読むことにした。
私の父親の再婚相手の女性だった。この時点でなんじゃそら!なんですけど、そもそもなぜこの住所をご存知かと、、
それはあとで解決しようと先を読むと、「ちえ様のお父上様がこの度ナンだかナンだかチェケラッチョに昇格しましたので、いよいよちえ様(私)にも分けてあげなさいということになりまして、お忙しいお父上様に代わり私が筆をとった次第です。」
それはご丁寧にお馬鹿行動をありがとうございます。
Tはそれを見て何故か大興奮している。
「なにそれなにそれ!それでそれで?!なに分けてもらうの?」
私は2枚目と3枚目の紙を見せて教えてあげた。
「ネズミタワーの底辺参加権のご招待状だよ」
ピラミッドの形をした(トーナメント表にも見える)個人情報が物語る。
10数年前とはいえ、私はもうインターネットを使っていたし、まさかこんな温故知新をこんな形で連想するとは思わなかった。
「どういうこと?説明して」とTは興味津々だった。
私はTがあまりにも面白がるので、説明をした。簡単に言うとこんな感じ。
ピラミッドの底辺に居る10人くらいの名前の中に、実父と再婚相手女性のなまえがあるでしょ?
そこに名前を書いた人は、このネズミタワーレターセットを3セット作って、自分の知り合いに送る。
再婚相手女性は私に1通送ってきてるから、他2人に不幸の手紙を送ってるはずなの。
実父は私には送ってないから、誰か3人に不幸の手紙を送ってるの。
だからこの二人は6人に不幸の手紙を送ったことになる。
「そこまではわかったけど、なんで不幸の手紙なの?」と聞かれ、Tはもしかしたらこの商法の存在すら知らない純粋な人なのかもしれないとほっとしたのを覚えています。この後大変なことになるんですけどね(ご察しの通りです)
自分の名前の上にある人に、3枚目の紙と現金3万円を郵送する。
それでおわりです。(本当は違います)
ひと通り説明し終わった後に、Tは「え??」という顔をしていた。
「損じゃん」と言った。
「ばかだよ」と私は言った。
まだ仕組みを理解しないTが、仕組みを知りたくて独学を始めてしまった。
興味を持ったのは仕方ないし、それをやめさせる権利は私にはない。
でも頼むから、やりたいなら他のゲームを探してほしいと言って、私宛てに届いたネズミタワーレターセットはその場で厳重に処分した。
この頃、手法はさまざまだったけど、この手のマネーゲームが流行ったらしく、違う友達からも同じレターセットが届いた時には正直うんざりした。
お金持ちの遊びならまだしも、、
分かってた気がしたけど、その遥か上を行くクズさを知らしめられた気がした出来事です。
振り返るきっかけは、先日、近所のデパートで似たような人を見かけたので、思い出したんです。人違いだったらごめんなさいだけど、その老人がもしも実父であったなら。
「ざまあみろ」としか思わない風貌でした。
100%本音を書くとすっきりするけど、自己嫌悪にもなりますね。
もう少し時間が経てばきっと。