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大人になってからアダルトチルドレンを知って、わかったことや気付いたことと、これからのこと。

空白はスペースの跡で、空白の存在だよ

私の周りがさわがしい。春だからかな。

でも私は静かにしていたい。春になるのは嬉しいけど、だからって、同じように騒がしくはできないから、そっとしてほしい。そんなことを言うと、どんなことになるのか、もうわかっているから言わないけれど。

来年も春は来るよ、再来年も春が来るよ、毎年、違う春が来るよ、同じように春が来るよ。だから別に生まれ変わらなくてもいい、わたしはそれでいい。それでこのままでいい。どうしたって変わっていくのを知っているから、せめて今は自分を大事にしたい。

 

大好きで、大事にしていた友人がいた。

彼女は躁鬱で苦しんでいた。私よりもたくさんの薬を飲んでいて、太ったり痩せたりを繰り返していて、泣いたり笑ったり、買い物をたくさんしたり、吐いたり、引きこもったり、家出して遠くに旅行に行ってしまったり、死のうとしたり生きようとしたり、私の人生何回分だろうと思うくらい、忙しくしていた。

私は否定も肯定もできずに、ただ彼女を見ていた。死のうとした時も止めなかったし、生きようとした時も喜ばなかった。どんな事を言っても、もう届かないと思っていた。

私の病気と彼女の病気はよく似ていたけれど、全然違ったから、ただ見て聞くしかできなかった。

ある日、彼女は働きたいと言って、ずっと主婦をしていたから働くという事にプレッシャーを感じていた。でも働きたいと言っててすごいと思った。だから、職業訓練という物があるよと教えた。その後、当時、私が通っていた作業所の所長さんが真ん中に入る形で、無理のない仕事を紹介した。お給料は良かった。彼女はそこでとてもよく働いて、とにかく頑張れた。すごいことだった。

毎日来ていたメールが来なくなった。でも、時々、変なメールが来るようになった。

私に、職業訓練に行ったらいいよ、とか、障がい者枠の仕事紹介しようか、とかだった。

彼女の中で、何かが生まれて、何かが死んでいた。私はそれに戸惑い、それでも、何も言えなかった。もう届かないと思っていた。いつも思っていたけど、本当の事になったんだ、と思って泣いた。すべてを断った私を、優しく呆れた顔をして、「最初の一歩は勇気がいるけど、いつかは踏み出さなきゃなんだよ」と言って、去って行ったのは彼女だ。毅然とした美しい知らない女性の後ろ姿を、私は見ていた。

きっと、お互い病気になったから出会えた人なんだって思って、終わった。

それきり3年が経っている。

先日、その彼女から、「元気?遊ぼう」というメールが来たけど、具合が悪いからと断った。何回か返信のやり取りをした。彼女の近況が知らされたメールだったけど、私の近況は何も知らせなかった。

私の具合が良くなりますように、と優しい文章を添えてくれた彼女だったけど、私は優しい文章を添えなかった。でも、このメールが具合悪いと言わなかったのが、私の良いところだと思うし、悪いところだとも思う。彼女が、「最近、記憶がおかしいんだ」と綴っていたけど、それには触れなかった。

自分自身が、医師に無断で断薬したときに、数年単位で記憶をなくした経験がある。

それはもう、届かない場所にある。取り戻せないただの現実で、夢なんかじゃないっていうこと、知ろうとしなければ、ずっと忘れているはずだから、私は、それがいい。

静かな方がいい。

私の時間は、私のためにつかう。忘れていいよ!

 

my backnumber to lock the door on the inside ジュニア辞書で精いっぱい作った後ろと前の文脈です。タイトルはこんなニュアンスで表したかったです。