おばあちゃんから貰った手紙
何歳頃だったか忘れてしまったけど、祖母と手紙のやり取りをしたことがある。
私は「おばあちゃんお元気ですか」と書いた。他の内容は忘れてしまった。
祖母からの返事が届いて、手紙の内容に衝撃を受けた事だけ覚えている。
おばあちゃんがくれた手紙の文章は、ひらがなとカタカナが多く、当たり前のように縦書きで、「○○しています」の「ます」は「〼」になっていた。
当時おばあちゃんは70歳くらいだったと思う。
内容に、ちえちゃんは字がとてもジョウズですね。ばあちゃんはあまり字がかけないのでハズカシイですがちえちゃんが手紙をくれたのうれしかったのでお返じしますね。
ちえちゃんは学校できちんとべんきょうしておりこうさんですね。とてもかしこくてばあちゃんのじまんの孫です。
このような内容でした。あと、同封した花の絵を喜んでくれました。
祖母は小卒で、小学校に行きながら畑の仕事も手伝っていたらしく、文字の読み書きも小学生低学年レベルくらいで、数学は全くわからなく、簡単な足し算と引き算と掛け算ができるくらいだった。
当時の私は、おばあちゃんはあんなに美味しいご飯を作れるのに、勉強が全然出来ないのに大人になってたのが不思議だった。
本を読んでみたいけれど、読めない字が多すぎるから楽しめないと言っていた。
(新聞の四コマ漫画は楽しいと言っていた)
私が大人になった今なら、字を読まなくても面白い本を探してあげられたのにな、と思う。
祖母はもう随分前に亡くなったのだけど、私の両親が離婚をしていたので、父方の祖母の最期はいつだったのかわからない。
お墓も知らないままだ。
手紙も無くしてしまった。
でもおばあちゃんは怒らない。きっと私を好きだから怒らない。田舎くさい身なりで、いつも適当なおばあちゃんだった。でもお料理はとても上手だった。そして会う時にはいつも言っていた。
ちえちゃん戦争はいけないよ、何があっても戦争だけはいけないんだからね、って。
勉強はできなかったけど、祖母は大切なことをたくさん知っていたし、生きる方法も料理の仕方も知っていた。私の母は料理が下手だったので、祖母の作る普通の家庭料理はご馳走に思えていた。こんなに凄いことできる人が、子供の私に言ったんだった。
ちえちゃん勉強はちゃんとするんだよ、悪い人に騙されないように、たくさん勉強するんだよ。
祖母から貰った手紙の事を思い出して、勉強の意味は万人に共通するものではなくて、個人が意味を持ってすればいいんだと、気づいた夜でした。
おばあちゃんお元気ですか。