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大人になってからアダルトチルドレンを知って、わかったことや気付いたことと、これからのこと。

手帳とノートと同級生と先生 1

私はノートの使い方が下手な子供だった。

それは今振り返ればなんだけど、、当時はきれいに書けている自分のノートが好きだった。先生の板書通りの並び、色分け、図形、すべてをきっちりと写していた。

一学期二学期、新しい年度、その度に新しいノートを用意するよう言われ、新しいノートを用意し、繰り返し板書を丁寧に写していた。

ノートを最後まで使い切ったことなど一度もなかった。いつも三分の一くらいページが余る。その余ったページには何も書くことなく放置、いつのまにかどこかに消えてく。(自分で処分した記憶がないので、どこかで失くしてるか家族に捨てられているかだろう)

私はノートが新しくなるのが嬉しかった。文房具だけは買ってもらえたからだ。新しい物を持てる、それが嬉しかった。三分の一余ったノートのことなんてすぐに忘れて、つい先日まで使っていたものなのに、もう二度と使うことはないと思っていたし、実際にそうだった。

小学生の時はそれで「よくできました」がもらえていた。私は小学校を高学年で転校しているのだけど、転校前も転校後も「よくできました」だったけど、テストで100点はおろか70点以上を取ったことは一度もなかった。

6年生の時に衝撃の出会いをした。

私より数か月あとに転校してきたEという女の子。明るくて清潔で上品でピアノを習っていた。すごくお金持ちの家の子なんだろうなと勝手に思っていた。

私の隣の席になったことでEと仲良くなった。小学生は仲良くなるとすぐに家に遊びに行く生き物で、私はEの家に何度か遊びに行った。Eの家は団地だった。

「お金持ちじゃないのにピアノを習っている、、!」と驚いたのを覚えている。Eには一人部屋が与えられていて、いつ突然行っても整理整頓されていた。物が少なく、女の子が好きそうなぬいぐるみなどは一つもなかった。赤いランドセルと、机の上にある組み立て式の紙製の小さな三段引出が唯一女の子っぽかった。

その引出には見覚えがあって、月刊誌りぼんの付録だった。しかも随分と前の号の付録で、その部屋には浮いて見えた。何より、私は過去に同じものを作ったけど、こんな風にはならなかった、もっとぶかぶかでスカスカで引出がうまく引いたり押したりできない状態だった。何も仕舞うことなくいつのまにかどこかに消えていった。

Eはその引出を「とても気に入っている」と言った。何を仕舞っているのか聞いたら、開けて見せてくれた。上段、消しゴム。中段、消しゴム。下段、消しゴム。全段消しゴム。消しゴムボックス。

使いかけの消しゴム、新品の消しゴム、香り付の消しゴムにグループ分けされていて、とてもきれいだった。私はそれまで消しゴムがきれいだなんて一度も思ったことがない。あの時は何がそう思わせるのかわからなかったけど、今なら簡単にわかる。

同じものが同じ場所に整理整頓された状態がきれいだったのだ。

Eは勉強がすごくできた。6年生の算数はEから習ったようなものだった。Eから算数の話を聞くのが好きだった。問題の意味や解き方を教わっているうちに、私は算数で90点を取った。人生最初で最後の90点だった。

Eとは中学校が別れて、私はその後数学で90点を取ることはなかった。

中学3年、推薦入試を失敗した私は、一般入試に向けて勉強をするわけだけど、その時助けてくれたのは先生の他に4人の同級生がいた。

その4人は、近い席、同じ班、ただそれだけの縁で私の世話をするはめになった。Eと別れた中学生の私は、その後また、ただ板書を丁寧に写す人に戻っていたので、ノートはきれいだったが、学習脳は腐っていた。どの教科も50点くらいでぼ~っとしていた。推薦入試が失敗した今、一般入試で点数取れるような脳みそをしていなかった。私本人は勿論だけど、担任の先生はもっと焦ったと思う。同じ受験生である同級生に私の世話係を任命したのだから。よっぽどの事態だ。4人の同級生は誰も嫌な顔せず、引き受けてくれた。推薦を落ちた私を励ましてさえくれた。自分だってこれから入試控えてるのに。基本的に3年3学期は自習が多いので、配られたプリントをこなしながら、各自好きな学習をする。私は「わからなくなったら聞いて」と言われていたので、プリントが配られて10分後には聞いていた。まずは隣の席のIに聞いた。Iは「どこがわからない?」と言うので「問1がわからない」と答えた。

Iの手元にあるプリントは終盤にかかろうとしていた。Iはしばらく考え込んで、「大丈夫か?いや大丈夫じゃない、これはまずい、絶対やばい」みたいなことを言って、Iの後ろを振り返ってAに言った。「机をつけるぞ」

Aは「え?」という顔をしたが私の白紙のプリントを見て「!?」みたいな顔になって、Aの隣のKも「ひぇ!?」となってKの前の席の寝ていたSの背中をバンバン叩いて起こし、給食時間のように机をくっつけて会議が始まった。ちなみにA、K、Sはプリントはとっくに終わり、学校のじゃない問題集をやっていた。

(つづく)

my backnumber to lock the door on the inside ジュニア辞書で精いっぱい作った後ろと前の文脈です。タイトルはこんなニュアンスで表したかったです。