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大人になってからアダルトチルドレンを知って、わかったことや気付いたことと、これからのこと。

15歳の世界と大人の立ち位置と適度な距離とデリカシー(2)

(つづき)

教室の前に置かれた椅子に、子供と二人で並んで座り順番を待った。

「本当に喋らなくていいの?」と言うから、うん、大丈夫、と応えた。何をそんなに不安に感じてるんだろうとも思ったけど、いや、自分も15歳の時はこうだったなくらいに思っていた。しかしそれは全く違った。「15歳の不安」とは別の問題が教室の中にあった。

順番が来て教室に入り、挨拶をして、机を挟んで担任と向き合った。では早速ですがと切り出された言葉の意味を、私は今も理解できていない。

理解できていない事を説明する人の話は、聞いてる側にはもっと理解できない物だと知った日でもあった。(頭の回転の良い人は、わけわからないこと言ってるように見える人の話でも、全体から汲み取って切って離して繋げるのが得意なのだろう)

「志望校は別にこれでいいんですが笑、単願は無理です笑笑」

子どもがため息をついて俯いた。私は「は?」と間抜けな声が出たと思う。以下に担任の言葉のようなものを、思い出せる限り並べてみる。

単願が無理なのは推薦できないから。単願が無理なのはこの中学校から単願入試で送り出したことのない高校だから(一般入試ならいる)。単願が無理なのは落ちたら最悪だから。単願が無理なのはうちが母子家庭だから。単願が無理なのは子供にその実技試験を突破する実力があるか自分(担任)は知らないから。単願が無理なのは「あの時先生の言ってた通りにすればよかったな~笑」という気持ちにさせたくないから。単願が無理なのは単願になると自分(担任)が行ったことのない高校に書類持って行かなきゃならないから。等

もっと無理な理由(?)を言っていたけど、我が子の言っていた「会話にならない」状態だったので、半分くらいは聞き取れなかったです。(声が小さいとかではなく、意味が分からないという意味で)

私がぽかーんとしていたら、横で子供が肩を震わせて笑ってるので、私も笑いそうになった。我慢していたのに、担任が右手人差し指を天高く上げ、ノートパソコンのエンターキーを物凄い力で叩いた。タ―――――――――――――ン!!!!

私たち親子は吹き出した。

そしてすぐ真面目な顔に戻した。私は心の中でなむだいしへんじょうこんごうを8回唱えていた。あとで子供に聞いたら、子供はレベルが上がっていたそうだ。

パソコンに映し出されたのは子供の成績表で、悪趣味な配色のエクセル表で非常に見づらかった。なんであんなに濃い紫。あと蛍光色に近い緑。

とにかく成績を確認すると、志望するには特に問題はなく思えた。「成績は問題ないんですけどね笑笑笑」と担任は言った。なんで笑ってるんだろうと思ったけど、もう無視することが出来た。私がしばらくそのグロテスクな成績表を見ている間に、担任は子供に単願は難しいんだぞーということを言い続けていたけど、子供は一切喋らなかった。

そして子どもが私を見て首を横に振った(もう限界という表情だと思った)ので、私は聞き取れた範囲で答えることにした。

 

単願入試に推薦書は必要ありません。推薦書が必要なのは推薦入試です。

中学校の実績は知ったこっちゃありません。一般入試で通われてる先輩がいるなら中学校の評価は問題ないと思います。よろしくお願いします。単願で結果が出せなくても一般入試受けるつもりなので大丈夫です。母子家庭だからというのはよくわかりません。受験には不利に働くのかもしれないですね。そうなら仕方ないです。子供の実技の実力を知らないなら副担任のA先生に確認してください。専門の先生なので。あの時先生のいう事~は絶対言わないし思いもしませんから気にしないでください。書類もって行くのは他の高校にも行くんですよね?だったら普通にしてください。

他は何かありましたか、なければ以上です。この進路で決定で今後ともよろしくお願いします。

そう言って三者面談は終わりました。最後の方は担任が「意味わかんね」という顔をしていました。私は自分の子供、ひいてはこのクラスにいる生徒全員が心配になりました。帰り道で子供に聞くと、担任の事を嫌っているのはクラス全員だということがわかりました。さらに、嫌ってる、というよりは、何を言ってるのかわからないのに偉そうにバカにしてくるから、辛いという事でした。

(つづく)

 

my backnumber to lock the door on the inside ジュニア辞書で精いっぱい作った後ろと前の文脈です。タイトルはこんなニュアンスで表したかったです。